100人に1人は経験するといわれるほどポピュラーなパニック障がい。
しかし、数ある疾患の中でも治りやすい疾患だと言われていますよね。
多くの方はしっかりと対応して治療をすると、数か月から数年で治るそうです。
その割に私は今年(2020年)で9年目、がっつり慢性化していますが(いろいろ調べた結果、うつ病を併発したことが治療が長引いている原因だと思われます)、自宅でライターをしていて家族に理解があり両親も元気なため、さほど困っているわけではありません。
しかし、世の中には毎日大量の薬を飲んで仕事に行っている方、発症したばかりで壮絶な苦しみの中にいる方、周囲の理解がなく一人で苦しんでいる方がたくさんいます。
私もいつか寛解させたいという希望はありますので、今日はここで、パニック障がいの治療法について紹介していきますね。
ここでの紹介は、東邦大学医学部教授の坪井康次氏が監修している「患者のための最新医学 パニック障害 正しい知識とケア」(2015・高橋書店)を参考にしています。
図書館にも置いてあると思いますので、もっと詳しく知りたい方は本を読んでくださいね。
- *日本におけるパニック障がいの代表的な治療法は薬物治療
- *パニック障がいの治療方法①薬物治療
- *パニック障がいの治療方法②精神療法
- *より効果をあげるには薬物と認知行動療法の併用がおすすめ
- *こちらもどうぞ
▼PR 血液検査でわかること
*日本におけるパニック障がいの代表的な治療法は薬物治療
世界中に患者が溢れているパニック障がいにはさまざまな治療方法がありますが、日本では以下の大きくわけて2つ、細かく分けて6つが代表的です。
・薬物治療
・精神療法(心理教育・カウンセリング・認知療法・行動療法・自律訓練法)
日本で主流なのは、薬物治療です。
最初に薬物治療があって、それにカウンセリングや行動療法などを加え、少しずつ心理的ケアも行いながら治療をしていきます。
インターネットで調べてみると、日本は薬物ばかりでその他の治療があまりなされていない、という批判をよく目にします。
患者を薬漬けにして云々という記事やスレッドもありますね。
しかしもちろんさまざまな治療法を試しているクリニックもありますので、私たち患者ができることは、まず知識を蓄えること。
情報を発見して取捨選択し、行動してみることは大切です。
医者の言うことを100%信じ込み、それさえしていればいい、病気を治す責任は医者にあるなどと考えるのはやめましょう。
医者を信頼することは大切ですが、自分でもできることはないか、探してみてください。
*パニック障がいの治療方法①薬物治療
日本が薬物治療をメインにしている理由としては、よく効果があるから。
それに尽きます。
精神薬は高価なものですのでクリニック側や製薬会社の儲けのためという話もありますが、大切なのは、薬は確実にパニック症状を緩和してくれるという事実です。
どんな薬がある?
パニック障がいに有効とされる精神薬はいくつもありますが、一般的には抗うつ剤である「SSRI」と抗不安薬である「ベンゾジアゼピン系」が使われています。
治療ガイドラインによると、治療の開始時には効果が高くて副作用が少ないSSRIをまず使い、即効性のあるベンゾジアゼピン系の抗不安薬を併用することとなっています。
ここでは簡単に、それぞれのメリットとデメリットを記載しておきますね。
・SSRI(抗うつ剤)
【メリット】
・広場恐怖に効果が高い
・うつ病によく効く
・副作用が少ない
・依存性がなく長期間服用でも安全
【デメリット】
・効果が現れるまでに2~4週間かかる
・飲み始めに副作用が出ることがある
・飲み始めに副作用が出た場合、断薬時には断薬症状がでる
・服用できない人もいる
ちなみに広場恐怖症について「それは何?」という方はこちらをどうぞ。
・ベンゾジアゼピン系(抗不安薬)
【メリット】
・即効性がある
・パニック発作を確実に抑える
・服用可能の人が多い
・薬の種類が多い
【デメリット】
・広場恐怖やうつ状態への効果は低い
・副作用がある
・耐性がある
・依存性がある
・断薬時に離脱症状が出やすい
薬の種類は本当にさまざまなありますので、わからないことがあれば担当の医師に確認してください。
私はSSRIのパキシルとベンゾジアゼピン系のデパスを服用していますが、一度減薬したとき、断薬症状が大変でした…。
*パニック障がいの治療方法②精神療法
薬物は症状を抑えてはくれますが、心の傷や痛みまで治すことはできません。
そのためにあるのが、精神療法、心のケアです。
実のところ、パニック障がいは精神病ではなく、脳の機能障がいであると言われます。
しかし脳の機能障がいが起きた結果、うつ病や広場恐怖などの精神病が発生するため、ため心のケアも大切です。
精神療法は、言葉を介して患者の認知・情緒・行動に働きかけていく治療法ですね。
主に以下の5つの方法があります。
・心理教育
・カウンセリング
・認知療法
・行動療法
・自律訓練法
精神療法1:心理教育
病気や治療について患者本人やその家族などが知識を学ぶのが、心理教育です。
つらい状態から治療を受けて抜け出るための、心の土台作りにあたります。
精神病の治療には家族の協力が不可欠なため、どんな病気なのか、症状への対処法はあるか、適した環境はどんな風かといったことを家族も学びます。
精神療法2:カウンセリング
医師あるいは臨床心理士が患者と対話を行うのがカウンセリングです。
患者の話を聞き、生活環境や考え方、行動などを洗い出して病気につながる問題点を明らかにしていきます。
そして、それを解決するにはどうしたらいいかを患者本人が気づくようにもっていく治療法です。
精神療法3:認知療法
病気にとってマイナスとなる考え方の癖を、患者本人が自覚して直していくように導くのが認知療法です。
パニック障がい患者がもつ特徴的な思考パターンを見直し、ものの見方や考え方の再構成を行います。
やり方は「不安を生む自分の考えを書きだす」→「自分の考えに自分で質問する」→「検討し、修正した考えを書きだす」この繰り返しです。
心の癖をかえるのは容易ではないため、挫折も多くなります。
そんなときにはカウンセラーに手助けしてもらい、少しずつ回復へ向かわせることが大切です。
精神療法4:行動療法
実際に恐怖や不安を感じる場所や場面にあえて身をさらし、心の抵抗力を鍛えていく方法です。
これは曝露療法(エクスポージャー)とも呼ばれ、広場恐怖に非常に有効です。
不安階層表を作る
↓
医師などの専門家の付き添いありで恐怖を感じる場所・場面を経験する
↓
家族などの付き添いありで恐怖を感じる場所・場面を経験する
↓
同じ場面で繰り返し行う
↓
一人で行動する
こんな段階を踏みます。
ある状況・ある場所が、発作とはまったく関係がないという事実を自分で体験して納得すれば、不安や恐怖は誤った思い込みだったと気付けます。
私もよく「成功体験の積み上げ」をやっていますが、あれも行動療法です。
精神療法5:自律訓練法
自律訓練法は強い緊張をほぐし、ストレスへの抵抗力をつける訓練です。
自分1人である程度まではすすめられるうえ、うつ病や不安症への効果が高いとされています。
緊張を鎮めリラックスを得る方法なので、パニック障がい患者には行動療法の前に行うことがおすすめです。
自律訓練法の基本は体の力を抜いて筋肉を緩めること。
その効果は、疲労回復・抗ストレス・コントロール力の向上・集中力の向上・苦痛の緩和・精神力の向上などがあります。
詳しいやり方は、以下の記事を参考にしてください。
自宅で出来ますし、何よりパニック障がいを持つ人にとって非常に有効な「リラックスする」訓練です。
初期レベルでもリラックス効果は高く、医師やカウンセラーの必要もありません。
そのため、これは自力でできる治療法としておすすめです。
自分をコントロ―ルできるようになれば発作が起きそうなときでも鎮めることができますよね。
ぜひトライしてみてください。
*より効果をあげるには薬物と認知行動療法の併用がおすすめ
薬を飲んで湧き上がる恐怖や不安に対処しながら、自分の考えの癖を直したり回避しがちな場面に身を置いたりしていくことが、回復への近道です。
つまり、薬物と認知行動療法の同時進行ですね。
とはいえ、最初のころは心身がボロボロで、とてもそんな余裕はないでしょう。
まずは薬をしっかりと飲み、一番怖いパニック発作が起こらないように整えていくことが大切です。
薬に体が慣れ、発作がなくなってきてから始めて、認知行動療法に移行してください。
いきなり自分1人で行動して怖い場所・場面に入ってしまうと、発作がひどくなって症状が悪化してしまうこともあります。
認知行動療法は上手に行うと、薬を飲まなくてもパニック障がいを治療可能です。
しかし効果が出るまでには時間がかかりますし、実行には強い意思と根気が必要。これが難しい~!
また、専門家である医師やカウンセラーと行おうとしても日本では実施している機関が少なく、費用がかかるというデメリットもあります。
つらく苦しい状態から早く抜け出たい! そう思うあまり、単独で無理をしてしまわないようにだけは気を付けてください。
*こちらもどうぞ
▼PR 健康は良質な睡眠から