パニック障がいになった当初、私は「パニック障がい」という病気・障がいを知りませんでした。
何が何だかわからないままで自分をとりまく世界が崩壊を始め、あれよあれよという間に会社に行けなくなり、外出できなくなり、引きこもりになってうつ病を併発しました。
さまざまな病院をぐるぐる回って不調の原因を探すうちに心療内科へ行きつき、そこでやっと自分がかかっているのが「パニック障がい」だと知ったのですね。
そのときはホッとして泣けたのを覚えています。
※そのときのお話
その後、現在(2021年1月)9年目を過ごしていますが、良くなったり悪くなったり……。
しかし自分でもいろいろと情報を調べていくうちにわかったことも多くなり、パニック障がいという病気に対しての不安はなくなってきました。
私は自分で長い時間をかけて調べてきましたが、病院でそれをサクッと行ってくれるのが「心理教育」と呼ばれるもの。
これは患者本人の病気に対する不安をなくすために有効です。
しかし一番効果が高いと私が思うのは、患者の家族に対してですね。
病気になってから家族との仲が壊れてきたという方は、参考にしてほしいなと思います。
今回は、心理教育とは何か、患者や家族にとって良い面は何なのかについて紹介していきます。
*心理教育とは?
まずは言葉の定義・意味から。
心理教育とは、正しい知識や情報を心理に十分配慮しながら伝え、精神障害などの病気によって起こる諸問題・諸困難への対処法を習得してもらい、主体的に療養生活ができるように援助する方法です。
自分や家族が今抱えている病気はどんなものか、それによってどんな困ったことが起こるかを正しく理解できるように、医療機関が教育を行います。
ここで使われる「精神障がい」は多くの場合「統合失調」なのですが、パニック障がい患者に対してもやはり偏見や無知による協力拒否はありますよね。
家族から協力が得られないと、パニック障がいも治すことが難しい病気。
心理教育は患者がきちんとしたサポートを得られ、患者本人と家族がしっかりと前を向いて治療に励めるようにするための教育なのですね。
本人への教育
自分がかかっている病気がどういうものかを理解するために行われます。
どんな症状があり、どんな治療方法があって、今どのレベルにいるのかといったこと。
そして日常生活で病気が原因で困難に面したとき、どのように対処していけばよいかなどです。
私は医師から「いわゆるパニック障がいと呼ばれるものでしょう」と診断されたとき、ホッとはしましたが、「それって何? パニくる病気?」と頭の中はハテナマークが浮かんでいました。
残念ながらそのときは詳細な説明などはなく、処方薬を出され、これでしばらく様子を見ましょう、と言われただけでした。
薬の飲み方や副作用の有無、今後の通院スケジュールなどは教えてもらえましたが、「パニック障がいとは」に関しての説明はゼロ。
薬が出たことは有難かったですが、不安で一杯になりながら帰宅したのを覚えています。
病院で教えてくれなかったので、家に帰って即パソコンで検索。
そこで出てきた情報や人のブログなどを読み、「ああー! これ私と一緒だー!」などと驚いたり喜んだり、絶望を感じたりしていましたね。
心理教育がある病院ならもっと良かったのにな、と、今は思います。
心理教育は治療の1つとして大変有効だと言われています。
しかしパニック障がいでは実施されないことが多いかもしれませんね……。
パニック障がいは完治しやすい疾患だともいわれていますし、きちんと治療すれば軽度で収まる人も多いからでしょう。
心理教育が行われるのは、統合失調やエイズなど、本人やその周囲が受け入れがたい病気のときが多いようです。
家族への教育
患者本人だけでなく、家族に対しても心理教育は行われます。
これを「家族心理教育プログラム」といいます。
目的は、家族の病気に対する知識を増やし理解を深め、前向きに患者本人と関わろうとする意志を育むため。
家族自身の気持ちを楽にするためにも行われます。
病気の家族を持てば、「私が悪かったのだろうか」と自分を責めたり無力感に襲われて憂鬱になってしまったりすることもあるでしょう。
また、無理解から「そんなのは甘えだ!」と決めつけ、何とか患者の気持ちを立ち直らせようと辛く当たってしまう人もいます。
そういうことがなくなるように、家族に対して行われる教育です。
方法は「教科書などで説明をする」と「グループワークなどで他の家族と話し合いを持つ」の2つです。
①教科書などで説明する
講義形式で病気への理解を深めてもらう形です。
比較的時間が短いとか、その家族特有の悩みについての対処方を学べるとかのメリットがあります。
しかし一方的な講義では内容が頭に入りにくいため、話し合う時間を持たせるなどの工夫が必要だとされています。
②グループワークを行う
他の参加者と一緒に話をし、自分の気持ちを話したり問題解決の方法を考え合ったりします。
お互いに支え合えるため、家族が持つストレスを緩和させることもできます。
ただししっかりと時間を取る必要があるため、参加に行きつくまでに時間がかかることが多いかもしれません。
身近なところにあった家族の無理解による離散
私自身は、大変ラッキーだったと思います。
今までにパニック障がいやうつ病だからといって家屋や周囲の人から偏見にあったことがありません。
しかし、私の友達や知人など、周囲の人にはそのようなことはあったようです。
最初に社会復帰で働かせてもらった焼き鳥屋では、そこの子供さんの1人も学生のときにパニック障がい患者だったんですね。
だけど、お店の夫妻は我が子が精神病になったことが受け入れられず、「病気じゃない、疲れてるだけ」と決めつけ、子供さんの話をほとんど聞かなかったそうです。
子供さんは家族から否定されてさらに傷つき、さほど時間を置かず家を出てしまいました。
一人で対処する方がマシと思った、と後に本人から教えてもらいました。
その後、数年経ってから私がお店に雇われたんですね。
お店の夫妻は私がパニック障がい患者であることは知っていましたが、やっぱりそんな大した病気じゃないんだろうと思っていたようです。
一見健康そうな普通の女性に見えるし、面接も普通にこなしたから大丈夫だろうって。
で、仕事の休憩時間にする雑談で私の話を聞きますよね。
店長は我が子が同じ病気になっていたことは隠し、アレコレと質問もしてきました。
私が自分の子じゃなく赤の他人であることで、冷静に病気の話を聞けたのでしょう。
そして、普通に働いていた私が作業中にいきなりパニック発作を起こし、恐怖に縮こまって過呼吸になったり泣いたりする様子を見たのです。
とても驚いて泡食っていましたが、そのたびに介抱してくれました。
その結果、ようやく「これはれっきとした病気で大変つらいものなんだ、本人の甘えじゃなかったんだ」と理解されたそうです。
後に、店長夫妻の子供さん(現在はパニック障がいを乗り越え、社会人として普通に働いている)と話す機会がありました。
すると息子さんから、病気に対する親の理解を得られ、あのときは悪かったと謝ってもらえた、あなたのお陰ですねととお礼を言われました。
そのとき話を少ししましたが、やはり理解されなかった当時は親をすごく恨んだと言ってましたね。
つらさを分かってもらえない悲しさに、病気になったのは親のせいではないかもしれないが、悪化したのは親のせいだという思いが重なってしんどかったそうです。
治ったから普通に帰ってこれるけれど、治ってなかったら恐らく絶縁していただろうとも言っていました。
だからやっぱり、家族にも正しく病気を理解してもらうことは大切なんですね。
*心理教育の目的6つ
心理教育の目的は、以下の6つです。
・対象となる人が抱えた困難を、自分でしっかりと受け止められるように支援する。
・困難を乗り越えるための技術を修得する。
・現実に立ち向かう力を身につける。
・困難に対処できるという自信を身につける。
・自己決定力や自己選択力を身につける。
・病院などの援助資源を積極的に利用できるようにする。
患者本人やその家族が、自走するための考え方や力を身につけるサポートをしていく、それが心理教育の目的です。
*自分と家族の気持ちが楽になるために! 心理教育を利用しよう
患者本人と家族が病気への理解を深め、積極的に行動できるようにするためのサポートとして心理教育があります。
パニック障がいに関しては、心理教育は一般的な治療プログラムではないかもしれません。
やりたいと望んでも、対応してくれる病院が少ないことも考えられます。
だけど諦めずに病院に相談してほしいのです。
家族の理解が得られない方、自分も現実を受け入れられなくて不安であるという方は、一度受けてみてください。
家族への説明は、主治医が行ってくれることもよくあります。
心理教育はつらい中でも前をむき、病を受け入れて歩いていくためのものです。
病気に対して過度に怖がらない、不安を持たないために、ぜひ利用してくださいね。
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